風の又三郎 ガラスのマント
東北の山間の村にかりんは母と二人暮らし。だが、父方の祖父は病弱な母を療養所に入れ、かりんを引き取ろうとしていた。旧盆の日、かりんは祖父の使いの男の靴を森へ隠しに行った。大樹の側で眠っていると歌が聞こえてきて、少年が立っていた。新学期、かりんの分教場に森の中で会った少年が転校してきた。高田三郎と名乗る少年は二百十日の風の日にやってきたので“風の又三郎”と呼ばれた。かりんは祖父の屋敷から父の遺品の懐中時計を持ち出し、森の丸太小屋に住む又三郎を訪ねて修理してもらった。ある日の放課後、一郎が兄の牧場に皆を誘ってくれた時のこと。嘉助が馬を追って谷底へ落ちてしまった。必死に這い上がろうとする嘉助が見たのは、マントを広げて大空に舞い上がる又三郎の姿だった。その夜かりんは又三郎から歌を習った。すると不思議にかりんの不自由だった左の耳にも聞こえたのだった。分教場では又三郎をめぐって子供達が対立し、河原で決闘することになった。嘉助は又三郎に風を起こさせようとするが駄目だった。その時対岸で発破の音がした。子供達は魚を漁っているタバコ専売局の男に抗議するが逆に威嚇されてしまう。ところがどこからか一陣の風が吹いて男の帽子が飛ばされた。又三郎が木の上で口笛を吹くと風は勢いを増して、やがて嵐になった。翌朝、かりんが分教場へ行くと、又三郎はまた転校していった。その日は二百二十日の風の日だった。